天国のたるへ

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何時の間にか私達の年齢を追い越して逝ってしまったのね。たる。

あなたを見つけたのは、17年前の5月。古い4階建て団地の3階に住んでいた時のこと。外からギャーギャーとカラスのような鳴き声が聞こえて、窓から下を覗き込むと植木の枝葉の隙間に茶色い物が動いているのを見つけた。急いでその庭に降りて行くと、手のひらにのる程の小さなあなたが、体を震わせていた。懸命にお母さんを呼んでいたんだよね。

団地では、ペットを飼うのは禁止されているし、親猫が引越しの最中で最後に残された一匹なのかもしれない。
そう思って私は一度部屋に戻り、出勤前のパパに「仔猫がいるの」と言って、今度は出掛ける時に一緒に見に行ったの。あなたは、何処に行ったらいいかも分からず、じっとしていたね。多分、生まれて1週間くらいだっただろうね。
パパに「もし夕方になってもそこに居たら、飼ってもいい?」と言ったけど、ハッキリしない返事をしてたな。

そしてあなたは、夜になってもずっとそこに居た。
パパの帰りを待って、「連れてくるからね!いいよね!」と返事も待たずに急いであなたを連れて来たよね。
あまりに小さくて、パパも驚いていた。
やっぱり人間に母猫から引き離されて捨てられてしまったのかな?身体が汚れていたから、先ず最初にお風呂に入れてあげたよね。
あの日からウチの子になったんだよね。

最初は、付きっきりでお世話したよ。ネコの育て方の本を買ってきて、マニュアル通りに、ネコ用ミルクを買ってきて飲ませたり、お尻を湿らせたティッシュでポンポンしてオシッコさせたり、トイレの仕方を教えたり、まるで子育てだったわ。ヤンチャなあなたは、動くもの何でも興味を示し、一丁前に獲物を狙う。足の指をクネクネすると、ガバッと飛び付いてきたよね。ちょっと痛かったよ(笑)

すっかり成長して、立派な成猫になったあなたは、誰もが褒めてくれる綺麗な猫だった。自慢は、真っ直ぐな長いシマシマ尻尾。端整な顔立ち。親バカだけど、イケメン猫だと私は思うよ。

高い本棚の上や冷蔵庫の上で寝るのが好きだったね。オモチャでもよく遊んだね。猫じゃらしを投げると、凄い勢いで取りに行っては、「もう一度投げて」と言うように、ドヤ顔でくわえて持って来たね。お前さんは、犬かい!ってツッコミしたよ。あなたは家族の一員で、自分が猫だという自覚は無かったでしょ?

ある時突然、人間の赤ちゃんがやって来て、あなたはお兄ちゃん気取りだったよね。お婆ちゃん達は心配してたけど、爪をたてる事は絶対しない賢い子だった、いつも近くで見守るように寝ている妹のそばに居たよね。
同じ位の大きさだったのに、妹の方が大きくなっちゃって、追いかけられると逃げてたね。

それから二回の引越しをして、やっと陽当たりの良い家に住めるようになって、こっそり内緒で飼う窮屈さから開放されて爪研ぎも気にしなくて良いよーって。初めての階段を嬉しそうに昇り降りしてたね。目を細めて日向ぼっこしてるあなたを見てると、私もほっこりと幸せな気分になれたよ。寒い日は、決まって私の膝の上に乗ってきたね。結構重くて、すぐに脚が痺れちゃったよ。

私と妹がお風呂に入っていると、ニャーニャー(ドアを開けてよー。一人にしないでよー)言って、開けてやるとお風呂場に入って来て、床の水を舐めていたね。洗濯機に風呂水を入れるホースから滴れる水滴を溜めてあるバケツの水を飲んで怒られたりしたね。今思うと、この頃から腎臓が悪くなっていたのかもね。気付いてあげられなかった。ごめんね。洗濯をする度にそのバケツを見ては、もうこれを舐めるのは誰も居ないんだなと寂しくなる。

夏の暑い夜は出窓で自分用の座布団の上に寝て、寒い夜は私かパパのベッドに潜り込んで来たね。私にはしなかったけど、パパには「場所開けろよー」と言わんばかりに脚を噛んだってね。パパは、脚の間に寝られて寝返りが出来ないと嘆いていたよ。

今、あなたの事ばかり思い出してる。写真やビデオを見て、涙が溢れてくる。寂しくて悲しくて、助けてあげられなかった事を後悔したり、もっと長生きさせられたのでは?と思ったり。でも、きっと一緒に暮らせて幸せだったよね?

帰省とかで留守にする時に、ペットホテルに連れて行かれるのが大嫌いだったね。他の猫達と仲良く出来ないからという理由で、ずっとケージに入れられたままで、ストレスだったよね。迎えに行くと、すっかり私の事を忘れてしまったのか?恨んでなのか?ケージから出てくれなくて、いつも私の手は傷だらけにされてたね。

動きが鈍くなって、あぁ、歳とったねぇ~と思ってはいたけど、先月位から具合が悪くなって、食欲もなくなり、食べる時も口の中で何か引っかかり食べ難そうにしてた。一日中寝てばかりで、ドンドン痩せていった。

もっと早く病気に気付いてあげてたら、病院に早く連れて行ってたら。本当にごめんね、たる。

病院に行って血液検査しても、抵抗する元気もあまり無かったね。
あの4,5日の通院は、本当は嫌だったよね。治ってくれれば良いなと思ったんだ。でも、お医者さんに「少し様子を見て、土曜日位にまた来て下さい。」と言われて、お家にずっと一緒にいた時に、あなたの容体があまり良くないと感じた。静脈点滴も効かないと気付いた。介護する覚悟して、紙オムツを買って来なきゃと思ってた。でも、最後まで自分でトイレまで歩いて行ってたね。偉かったね。もっと甘えてくれても良かったのに。手を煩わせてくれても良かったのに。

最後の夜は、自分でベッドに上がれなくなってたから、私がパパのベッドに運んであげたね。朝までもってくれ!もしかしたら?と不安になりながら眠ったよ。

その夜、突然パパが「たる!たる!」と呼ぶ声で目が覚め、布団を履いで見ると、苦しそうなあなたの姿。

急いでダイニングのホットカーペットの上にあったあなたの座布団に寝かせて、パパと二人で何度もあなたの名前を呼んだ。夜中の2時だった。苦しそうな声をあげながら、時々息を吸う。また少し止まって、また大きく息を吸う。止まってしまうと怖くて、息を吸ってくれると「まだ生きてる。」とホッとする。でも、もう苦しそうなあなたを見るのが辛くなって、最後は、「もう良いよ、頑張らなくて良いよ。」って思ってしまったの。

苦しそうな息をし続けて20分位だったかな、とうとう最期の時がきてしまったね。
とても綺麗な顔してて、信じられなくて、でも、もう息をしない。
娘を起こして、お別れをさせた。

あなたは私達と暮らして、幸せだった?
私は、あなたと暮らした17年7ヶ月はとても楽しかったよ。本当に感謝しているよ。たくさんの楽しい想い出と、癒しをありがとう。

今日は、この家に引越してちょうど一年目。
もっと長生きして欲しかったよ。

たる、もう苦しくないよね。
美味しいゴハンをたくさん食べてね。

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